Posts tagged "ホラー"

もうひとりいる|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★★★ 経験している最中はそうでもないのに、後で振り返ってみたとき「なんだったんだろう、あれは……?」と思うような出来事がけっこうある。 『もうひとりいる』は、そんな映画だ。 最初観たときは、とくに印象に残らなかった。佐久間信子、世那、川辺千恵子という3人の無名アイドルを主役に据えた短編映画で、彼女たちは劇中でも新人アイドルの役で登場する。 3人とも、初々しいながら一所懸命演技をしていて好感が持て […]

霊女 MISAKI|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ テレビ東京系列にて、毎回たった3分間だけ放送されていた連続ホラー・ドラマ『MISAKI』が、そのソフト化にあたり前編(本作)と後編(続編『MISAKI2』)の2本にまとめて編集された。 トータルで収録してもせいぜい1時間なのに、わざわざ別売りにするところがいやらしい。結果として、約80分の収録時間の内、本編は30分、残り50分は延々とメイキングという本末転倒な内容となっている。 霊感をもつ少女 […]

神の左手 悪魔の右手|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ 楳図かずおの有名ホラー漫画を、平成『ガメラ』3部作で知られる金子修介監督が映画化。ちなみに『ガメラ3 邪神覚醒』で主演を務めた前田愛も脇役で登場している。 当初の予定では那須博之が監督することになっていたが、撮影前に逝去してしまったため、金子監督が代わってメガホンを取ることになったという。 このような因縁による本作の主人公を、那須監督の『デビルマン』にも【ミーコ】役で登場した渋谷飛鳥が担ってい […]

案山子|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ ホラー映画マニアたちからはすこぶる評判の悪い「伊藤潤二作品実写化シリーズ」の一つ。 タイトルは『案山子』となっているけれど、実際のストーリーは『墓標の町』という作品に準拠しているらしい。 野波麻帆演じる主人公は、失踪した兄を追いかけ、トンネルの向こうにある村を訪れる。 しかし、その村は、ある少女の悪霊によって支配されていた。 その少女は、かつて主人公の兄に恋心を抱いていたが、主人公に妨害された […]

藪の中|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ 黒沢映画の原作としても有名な芥川龍之介『藪の中』は、人間の記憶や主観が、いかに都合良く捻じ曲げられるかを物語る古典文学である。 とはいえ、けっきょくのところ読者の記憶にもっとも印象強く残るのは、《愛する妻を目の前でレイプされる》という、悲惨きわまりないシチュエーションではないだろうか。 だとしたら『藪の中』を「ポルノ小説」として解釈したとしてもおかしくはない。おそらくこの映画版はそんな発想から […]

ゾンパイア|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★★ 封印されていた吸血鬼の女王が眠りから覚め、孤島の小さな村を恐怖に陥れる。 古めかしい小屋の質感など、寂れた孤島の殺伐とした空気を演出することに成功している。終始、やるせない雰囲気の中で、気怠く展開していく物語だ。 吸血鬼の女王を演じる女優は、クールな美貌が気品を放っており、ハマり役。 しかし、なにせゾンビも“兼任”しているものだから(つまりゾンビとバンパイアで「ゾンパイア」)、セリフがまった […]

ゾンビドローム|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ この映画は、予告編のナレーションがなかなかの名調子で、ずっと耳にこびりついていた。 皮膚が不気味に膨張し……! 顔面はケロイド状の肉塊と化し……! 体液がとめどなく流れだし……! 頭部が破裂する! ぞんびどろおむ!! 原題の「OZON」とは、劇中に登場するドラッグの名称。 こいつを体内に注入すると、自分の体を思いのままに変形できるようになる。 またそれがこの上ない快楽をともなうものだから、歯止 […]

囁く廊下 女校怪談|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★★ 一口に「ホラー映画」と言っても、単純に「ホラー(恐怖)」だけを追求している作品は、意外に少ない。 たいてい、恐怖演出はあくまでも“味付け”であって、本当のテーマは別にある。 韓流ホラー『囁く廊下』(旧題『女校怪談』)の場合、テーマは《教育の暴力》だ。 厳格な女子校で巻き起こる、謎の連続殺人。その背景には、傲慢な大人たちによって青春を奪われてしまった少女たちの、哀しみと怨念が秘められていた── […]

新・妖女伝説 セイレーン|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ 《男の欲望》を喰って生きる女妖魔【セイレーン】の恐怖をエロティックに描く。90年代から続くVシネマ・シリーズの通算第5作、00年代に入ってから最初の作品である。 エロスと怪奇の組み合わせと言えば、即座に思い浮かぶのはジェス・フランコやジャン・ローランの女吸血鬼物で、ああいった耽美幻想的なムードを期待してしまう。 ところが本作の世界観は、むしろその対極にある。 メインとなるのは、ギャングたちのお […]

押切 劇場版|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ パラレル・ワールドを題材にしたSFホラーで、いちおう伊藤潤二の漫画を原作としている。読んでいないので比較できないが、少なくともこの映画版に『富江』や『うずまき』のような猟奇色はない。 一つ言えるのは、もし伊藤潤二原作という前提がなければ、こんなに古臭くて退屈な作品が世に出ることはなかっただろう、ということである。 「押切」とは、主人公の高校生の名字。もう一つの世界に住む自分が、この世界にやって […]

玩具修理者|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★★★ 小林泰三の原作小説から、猟奇的な描写の一切を削除し、幻想的なお伽話に仕上げた短編映画。 言うまでもなく、映像化作品を語る際には、原作とは「別物」として評価すべきである。原作にあったものが「ない」としても、作品として完成しているのであれば、それは「不足」にはならない。ましてや約45分という時間の制約があるのだから、原作の内容を余さず再現しようとすれば、消化不良になってしまいかねない。したがっ […]

自殺サークル|評論家を燃やせ!(いいニオイさ)

★ 冒頭、新宿駅のホーム。何十人もの女子高生が、手をつないでいっせいに飛び込み自殺する。飛び散る大量の血しぶき、肉片。 このナンセンスな演出が、『自殺サークル』という映画を象徴している。とにかく、ただひたすら観客を不快な気分にさせるという目的のために、すべてが注ぎこまれた映画だ。 加えて作品全体から感じられるのは、若者文化、とりわけ90年代後半以降のトレンドに対する、強烈な憎悪である(そうでないと […]