耽美エロスの巨匠、ジェス・フランコが、カルト女優、ソリダット・ミランダをフィーチャーして作った映画の一つ。ミランダの遺作でもある。

フランコ&ミランダ・コンビによる作品の国内盤DVDは、今のところ、本作を入れて計3作品が発売されている。そのためか、パッケージには「3部作の完結編」とあるけれど、実際には、国内盤が出ていないだけでもっとたくさん作られているし、3作品にはストーリー上の関連性もない。誤解を招く表記はやめてもらいたいものだ。

さて、国内発売されている3作品のうち、『ヴァンピロス・レスボス』は吸血鬼、『シー・キルド・イン・エクスタシー』は復讐モノだったが、『恍惚の悪魔 アカサヴァ』はスパイ活劇。

ソリダット・ミランダ扮するスパイが、「謎の石」の行方を追うという筋書きである。

しかし、ストーリーを進行していくのは、愛人となる色男のスパイ。本作においてソリダット・ミランダは、実質上、脇役扱いである。

それにしても、平坦で面白みのないストーリーだ。大がかりな特撮もなければ、アクションに見せ場があるわけでもない。

けっきょく「謎の石」を奪った犯人は、逃げ延びる途中で自滅してしまう。プロットも杜撰きわまりなく、「サスペンス」としても楽しめない。

ホラー映画でもないのに、いきなりゾンビが出てくるのには呆れた。

DVDパッケージの説明文によると《人間が「謎の石」の光を浴びるとゾンビ化してしまう》という設定になっているらしいが、劇中ではいっさい説明されないので、観ているほうはわけがわからない。

フランコ作品特有の、気怠く、不条理なストーリー展開は、テンポの良さを要求されるスパイ活劇とは、はなはだ相性が悪い。膨大な数のB級映画を粗造乱造していたことで知られるフランコ監督だが、『恍惚の悪魔 アカサヴァ』は明らかに「ハズレ」の部類に入る。

けっきょく本作の見所は、ソリダット・ミランダのヌード・ショーと、ひっきりなしに鳴り響くファンキーなBGMのみ。でも、それならフランコ&ミランダ・コンビの代表作、『ヴァンピロス・レスボス』でもじゅうぶんに楽しめる。

コレクターでもないかぎり、あえてお薦めはしない。