★★★

人間は、死んだらどうなるのか。死後の世界は、実在するのか。

――この問いかけは、恐怖を掻き立てると同時に、どこかロマンチックな響きを帯びている。青臭いとはわかっていても、つい惹きつけられてしまうテーマの一つであり、ホラー映画を生み出す原動力となる。

その答えを実証するために開発されたのが「ゴーストシステム」。霊に実体を与え、現世に甦らせる装置である。

物語は、主人公の女子高生の親友である少女が、突如失踪してしまったことから始まった。ある日、主人公の携帯電話に、親友のアドレスから奇妙なメールが送られてくる。

それは意味不明な文字の羅列と共に、どこかの森を写した写真が添付されていた。親友は、もしかしてその森にいるのではないか──?

主人公は、親友の彼氏と共に、発信源をたどって森に辿り着く。やがて、問題の写真が撮られた場所を突き止めるが、そのとたん、なぜか親友の彼氏が発狂し、襲いかかってくる。

命からがら逃げ延びた主人公は、森の奥にある廃墟に身を隠す。しかし、夜になると、不気味な幽霊たちが主人公に群がる。

間一髪のところを、見知らぬ女性に救われた。

彼女は、ゴーストシステムの開発者。一家代々、霊界の研究を受け継いできたという。

廃墟は、ゴーストシステムを稼働させるための施設であり、この森は、死者を甦らせるための実験場だったのだ。

主人公は、施設の中で、ようやく親友と対面する。しかし、親友はすでに霊体となっており、その上、主人公に憎悪を抱いていた。

じつは、親友の彼氏は主人公に浮気していて、痴話喧嘩の挙げ句、親友を殺してしまった。そして、この森に埋めたのだ。件の写真が撮られた場所は、まさしく親友の死体が埋められた場所であった。

……まぁ、きわめてイージーなストーリーではある。

死者を甦らせる危険はあらかじめ予測できるだろうに、ゴーストシステムの開発者は、あきらかにその対策を講じていない。

結果、システムは暴走し、溢れ返った霊をコントロールできなくなる。そして、ついにはこの世界が、死者に乗っ取られてしまう、というオチだ。なんともマヌケな話である。

それに、死者だって、誰もが現世に恨み辛みを残しているわけではない。それなのに、甦った亡霊たちは、当たり前のように生者たちに襲いかかる。科学を題材にするなら、このへんのもっともらしいエクスキューズも欲しいところだ。

また、死体を埋めた場所が、たまたまゴーストシステムの実験場だったというのは、あまりにもご都合主義的ではないか。

とは言え、『ゴーストシステム』は、ストーリーや設定を楽しむための映画ではない。

その魅力は、映像美にある。

森の木々や、廃墟の壁の割れ目から、不規則に差し込む光の束が、美少女を照らす。作品全体の雰囲気が、とても静かでゆったりとしていて、心地よい幻想空間を作りだしている。

1時間強と短くまとまっているのも良い。ムード重視型の作品につきものの冗漫さを回避し、物語が終わるまで一定のテンションを保ち続けている。

また、『ゴーストシステム』は、一人の少女が怪奇な事件を通して、自らのアイデンティティに目覚めていくという「青春映画」でもある。ホラー演出は、あくまでも、作品に緊張感を加えるためのスパイスにすぎない。

その主人公を演じるのは、グラビア・アイドルの桜木睦子。

「妹系」の代表格として親しまれている彼女だが、数々のイメージ・ビデオで見せる朗らかなキャラクターからは想像もできないくらい、真摯な演技を見せてくれる。

誰もいなくなった世界に唯一人残されたと知ったときの、悲しみに満ちた表情が忘れがたい。

本編は言うに及ばず、予告編も印象的だ。その最後で、桜木がブラウン管の向こう(※)の観客に投げかける強い眼差しは、目を逸らすことがためらわれるほどの訴求力を持っている。いま、どうしているのかな。