可憐な少女をヒドい目に遭わせて、その苦しみ悶える姿を愛でるというのは、ホラー映画の醍醐味である。

『美少女の死顔は美しい』も、その一つ。タイトルのとおり、女の子が不条理な事件に巻き込まれて殺されていく様を描く。

全部で4作品からなるシリーズ。それぞれグラビア・アイドルたちが主演を務めている。本作『sign』の主演は、遠藤栄理香。

主人公は、高校の演劇部員。文化祭で発表する劇の脚本を任されたものの、なかなかペンが進まない。

そんなおり、見知らぬ人物が書いた脚本を拾う。内容は、行方不明になった少女たちが惨殺されていくというスプラッター物。

遠藤は、それを自分が書いたことにして、部員たちに配った。しかし、その日以降、遠藤の携帯電話に、見たことのないアドレスから奇怪なメールが届くようになる──。

メインとなる遠藤は、たしかに整った顔立ちではあるものの、これといった個性がなく、観終わった後、まったく印象に残っていない。

アイドルに演技力を要求するのはつまらないことだが、しかしそれを支える脇役たちも同レベルの素人ばかりというのはいかがなものか。

路上アーティスト【さかな】やネット・アイドル【マリア】といった、いかにもイマドキの世相を反映したキャラクターが登場し、《現代社会の病理を描き出す》という狙いを感じさせる。しかし、ただニコニコしながら白い部屋の中をうろつき回っている【マリア】はさておき、【さかな】役の男優のわざとらしい表情と、口の中に物を詰めているような勿体ぶった喋り方には、ほんとうにイライラさせられる。もし、こういうのを「俺の芸風だ!」などと考えているのだとしたら、根本的に勘違いしているとしか言いようがない。

ストーリーの進行も冗漫。1時間ほどの短い内容であるにもかかわらず、異様に長ったらしく感じてしまう。

それでいて、散りばめられた謎が解明されることはなく、けっきょく何がなんだかわからないまま、クライマックスの美少女惨殺へと突入。椅子に縛り付けられた遠藤が、手術用メスでめったざしにされ、口から血を吐いて絶命する。

しかし、遠藤を始めとする美少女たちが迷い込んだ空間が何処なのかも、また彼女らを殺したのが何者なのかも、けっきょくわからずじまいである。

そもそも、作品全体のテンションが緩みきっているので、いくら凄惨な光景が唐突に展開されようと、何の感動も覚えない。

色眼鏡で見られがちな趣向だからこそ、周囲の無理解を一笑に付すほどのクオリティが求められるはずだ。こんな安っぽいイメージ・ビデオみたいな出来では納得がいかない。

なお、ビデオ版はそれぞれ単独にリリースされたが、DVD版には一枚に4作品すべてが収録されており、お買い得。誰が買うんだか知らないけど。