日本のアングラ劇団「オルガンヴィトー」が自主制作したスプラッター映画。

ここでの「オルガン」とは楽器のことではなく《臓器》を意味する(ついでに「オルガンヴィトー」で《五臓六腑》となる)。

《人体破壊》をテーマにした、陰惨で救いのない物語だ。

臓器売買の現場に潜入した刑事が、犯罪グループに拉致監禁された。

主人公はその拉致された刑事の上司で、刑事の兄とともに犯罪グループを追いつめていくという、サスペンス仕立てのストーリーとなっている。

終盤で兄は、事件の黒幕から、弟が廃人にされたことを教えられる。

四肢を切断された挙げ句、麻薬を打たれて廃人同様にされていたのだ。

その怒りと絶望は、やがて彼自身の肉体をグロテスクに変形させていった――。

ところが、ただ“変形”するだけなのである。

モンスターと化して犯罪グループに逆襲するとかいうわけではなく、ただじっと虚空を見据えるだけ。ちっとも面白くない。

ついでにいうと、ビデオのジャケットにもなっている「蛹から出てくる女」は、登場人物のイメージの中で出てくるだけなので、ストーリーとはなんの関係もない。

また、プロットの構成の上では早いうちに弟が破壊されていたことが判明してしまうため、兄が変わり果てた姿の弟と対面するシーンの衝撃が殺がれている。作劇のキモというものを、まるでわかっていないようだ。

映画制作のスキルも素人丸出しだ。全体を通してアフレコの声がずれており、セリフが聞き取りづらくてしかたがない。

とはいえ、それなりにキャリアのある劇団らしく、主人公を始めとして演技自体には緊迫感が漲っている。そのおかげで、稚拙な仕上がりながらも安っぽさは感じられず、じっとりとした濃密な空気を終始体感することができる。