★★★★
つのだじろう原作のホラー漫画『亡霊学級』の実写化第2弾。鶴田法男が監督した前作に続き、早くも翌年に発表された。
今回、監督を手がけたのは、ピンク映画四天王の一人、サトウトシキ。一見、畑違いのように思えるが、はっきり言って本作の方が、ホラー映画としての恐怖度は断然高い。
前作同様、夏休み中の高校が舞台となっている。
主人公は、生まれる前に父を亡くし、ずっと母と二人で暮らしてきた。その母も病気で亡くなり、親戚の家に引き取られることとなる。
学校も変わり、生活が一変した彼女だったが、ほどなくして同級生のいとこと、その恋人と仲良くなる。
ある日、主人公といとこは学校で、昔の制服を着た不気味な少女を目撃する。それからというもの、主人公の日常が徐々に軋みはじめた。
いとこは、自分の恋人が、主人公に心移りしているのではないかと邪推する。以来、いとこはまるで人が変わったかのように、主人公に辛くあたるようになった。
ある夜、主人公はいとこと、いとこの恋人を取らないようにと「指切り」をする。それからというもの、主人公がいとこの恋人と会話するたびに、小指が腐ったように膨れ上がって痛み出すという幻覚に苛まれる。
それと前後して、主人公は祖母から、驚くべき事実を知らされる。
主人公が現在通っている学校には、かつて母も通っていた。若き日の母は、そこで酷いいじめに遭い、以来、人間不信に陥ったという。
やがて、ある男性と恋に落ちるものの、祖母らによって仲を引き裂かれてしまう。絶望のあまり、二人は心中を図るが、母だけが生き延び、主人公を産んだのだった。
主人公は幼い頃から、男性から遠ざけられるように厳しく育てられてきた。男の子と話をしただけで折檻されたほどである。
そして、主人公といとこが目撃した幽霊は、他ならぬ主人公の母だった。
母の亡霊はいとこに憑依し、彼女の嫉妬心を煽ることで、主人公が男性と交わらないよう仕組んでいたのだ。
死して尚、娘の人生を支配する母親。それは、娘に自分と同じ苦しみを味わわせたくない、という愛情に根ざしたものではない。自分の得られなかった幸福を得ようとしている、娘への嫉妬心だ。それは、母親が実の娘に対して持つべき感情ではなく、一人の「女」としてのエゴである。
さらに主人公は、唯一の親友だったいとこからも憎まれ、もはや頼るべきものは何もない。ポルノ男優の佐野和宏が演じるいとこの父親も、いつも優しい笑いを浮かべながら、どこか得体の知れない不気味さを漂わせ、主人公の孤立感をいっそう強調している。
母がかつて恋人と海で自殺を図ったというエピソードから、この映画には「水」のイメージが頻出する。
学校の洗面所で顔を洗う主人公が、排水口に吸い込まれていく水を凝視する冒頭からして、何か抗いがたい大きな力に呑み込まれていく様を暗示しているかのようだ。
全編に渡って、照明を駆使した幻想的な映像作りがなされており、それはあたかも水面に反射する陽光を連想させる。
ラスト、主人公は夜の校舎で、母親と対峙する。不幸な人生を歩んできた母親の苦しみを知りながらも、現世への未練を捨て、死後の世界での幸せを選んでほしいと訴える主人公。
それを聞き入れた母親は、若かかりし頃の姿に戻り、闇の彼方へ消え去った。
いとこにかけられていた呪いも解け、まぶしい朝の光が教室に射し込む――。
感動的なエンディングだが、そこであっさり幕切れしてしまったのが残念である。
余韻を深めるためにも、やはりここは「後日談」を見せてほしかった。
水のイメージで統一された作品だけに、仲直りした三人が楽しくプールではしゃぐシーンなんかを入れてみてはどうか。
真夏の強い日差しの中、主人公がふとプール・サイドを見やると、陽炎の向こうに母が佇んでいる。不意にいとこに呼ばれ、いったん目を離した主人公が、再度振り返ったとき、もうそこに母の姿はなかった――なんてね。