ヒッチハイクしてつかまえた色男を住処の豪邸に連れ込んでは、SEXした後に殺して血を吸う、美人姉妹のお話。

この映画の見所となるのは、やはり、二人の美しき女吸血鬼が男の裸体にむさぼりつくシーンだろう。

しかし、いくらなんでも「それだけ」というのはツラい。

ストーリーの上でのクライマックスと思えるエピソードが、まったくないのだ。

かといって(この作品の元ネタになっているであろう)ジャン・ローランのように幻想的な映像表現を試みるでもない。けっきょく、90分近くの収録時間を持たせることができず、退屈してしまった。

姉妹は、通常の(?)吸血鬼のように歯を立てて血をすするのではなく、鋭利なナイフを突き立て、溢れ出る血にしゃぶりつく。

その様は、あたかも獲物に群がるハイエナのようで、優雅さや色気とは程遠い。森の奥の屋敷を舞台にした耽美的なムードとのギャップが強烈だ。

それにしても、この姉妹は本当に吸血鬼なのだろうか。

通常の吸血鬼映画なら、吸血鬼に血を吸われた者はやがて吸血鬼になってしまう、というルールがあるはずだ。ところが、彼女たちの犠牲となった男たちは、全身をナイフでメッタ刺しにされ、そのまま息絶えてしまう。犠牲者の死体を、彼女たちが交通事故に見せかけて処分するという件もある。ましてや彼女たちは、コウモリに化けたりといった超能力を持っているわけでもない。

なんだか、自分たちを本物の吸血鬼だと思い込んでいる、頭のイカれたゴス女たちという気がしないでもない。

この物語は、件の屋敷の中で彼女たちが全裸になって戯れているところへ(そう、この映画は「姉妹百合」でもあるのだ)、覆面を被った何者かが押し入り、二人を銃で撃ち殺す、というショッキングなシーンで幕を開ける。

ラストでは、それが何年も前に起こった事件であり、以来、彼女たちの亡霊が現れ、人を襲うようになったということが語られる。

現世に怨みを残す姉妹が、吸血鬼となって蘇ったのか。はたまた、過去にあった事件に自分たちをなぞらえているだけのか。観客の想像力を掻き立てる演出は興味深い。

しかし、この映画の主人公は、彼女たちではない。

じゃあ誰が主人公なのかというと……じつは誰でもないのだ。

特定のキャラクターの心境を描くことなく、あくまでも傍観者の視点から、話の流れを追っていく。

それはそれで興味深い試みではあるものの、感情移入する対象がいないせいで、いまいちストーリーにのめりこめないというのも事実である。

キャラクターの行動にも、腑に落ちない点がある。

姉妹の犠牲の一人となったオッサンが、朝になって目を覚ますと、屋敷に一人取り残され、腕にパックリと傷が開いていることに気づく。

その時点でおかしいと思うはずなのに、翌日、あの女と再会するやいなや、あっさり屋敷に戻ってしまう。

他にもキャンピング・カーで暮らす気のいいカップルが登場するけれど、けっきょくオッサンが彼らの元に逃げ込んできたせいで、追ってきた吸血鬼姉妹によって、二人ともむごたらしく殺されてしまう。

で、そのスキにしゅびよく逃げ延びたオッサンだけが生き残る。

この不条理なオチを評価する向きもあろうが、奇を衒ったただの露悪趣味という感じがしないでもない。