★★★

古賀新一の古典オカルト漫画を原作に、主人公の女子高生黒魔術師【黒井ミサ】を佐伯日菜子が演じるTVドラマ・シリーズ。

あの鼻にかかった、というより鼻が詰まってるんじゃないか、と思える鈍重な声は、かなりクセの強いものであるが、それゆえに、呪文を唱えるシーンでは強烈なインパクトを生み出す。佐伯の存在なくして、テレビ版『エコエコアザラク』は成り立たないとすら断言できる。

とはいえ、私自身はリアルタイムで観ていたわけではない。ビデオ版のパッケージには《各巻完結・どの巻からでも楽しめます》と書かれてあったので、あえて最終回の巻を買ってみた。

【ミサ】が、ついに生き別れの妹【アンリ】と対面する。 しかし、その登場の仕方がじつにショッキングなのだ。

謎の黒魔術団によって拉致監禁されていた【アンリ】。彼女は片耳を削がれたあげく、全身に拷問を受けていたため、ミイラのように包帯でぐるぐる巻きにされ、車椅子に乗って現れる。

かつてホラー作品の中で、これほどまでに悲痛な姿の「ラスボス」がいただろうか?

一人の少女のかけがえのない人生を破壊して創り上げられた邪神の依代は、その存在そのものが、生命の尊厳を冒涜しているかのようだ。

しかし惜しむらくは、シリーズの最後を飾る一連のエピソードが、狭い田舎の村での出来事に終始しているため、【アンリ】に憑依した邪神の凄さはまったく伝わってこない。そもそも原作の漫画自体が、高校生たちの日常を舞台にした素朴な作品なので、大風呂敷を広げすぎてしまったために無理が生じたのかもしれない。

加えて、一見して低予算とわかる安っぽいセットが、スケールの小ささに拍車をかける。いくら文明からかけ離れた村が舞台だからとはいえ、謎の青年が忍者みたいな格好をして登場するという演出には、センスを疑ってしまった。

悪趣味といえば、腹を割かれて血しぶきが吹き上がるときの音を、「そよ風」に喩えるのは、こじつけすぎ。ブラック・ユーモアのつもりでやってるなら、もっとスマートさが欲しかった。

けっきょく、この最終回が描こうとしていたのは、【ミサ】と【アンリ】の姉妹愛に尽きる。邪神を倒した【ミサ】が、廃人同様の体にされた【アンリ】を抱くシーンでは、遊園地で楽しく遊ぶ二人の姿が挿入され、悲壮感を煽る。

【アンリ】の横顔に頬寄せる【ミサ】。しかし、そこに在ったはずの耳は無い。 邪神を打ち負かすほど強大な【ミサ】の魔力をもってしても、最愛の妹と過ごした幸福な日々を取り戻すことはできないのだ。

『エコエコアザラク』とは、魔道を極めたがゆえに魔道に翻弄された、一人の孤独な少女の悲劇なのである。