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ある朝、学校に行ったら、机の中に生イカが詰まっていたらどう思う?

夜の校舎で、血塗れの女子高生が、生イカを振り回しながら迫ってきたらどう思う?

そんな狂ったドラマがコレである。生イカを机に詰めるには、魚屋で大量の生イカを買い、学校まで運ばなくてはならない。重いし、目立つし、だいいちイカ臭い。その苦労を考えると、いじめてるんだかいじめられてるんだかわからなくなる。生イカで人を殴り殺すという発想も、まさにイカれている。

一話5分。全12話が、3枚のDVDに分けて販売されている。特典映像としてメイキングが追加されてはいるものの、収録時間はそれぞれ約30分。にもかかわらず、定価は一枚4800円(税抜)! 主演の石川佳奈と原史奈に思い入れのない人は、まず手を出さないであろう代物だ。

いちおうサスペンス仕立てになってはいるが、ストーリーなどなきに等しい。「なんで主人公たちは学校から出られなくなったの?」とか、「消えた全校生徒は何処へ行ったの?」とか、「誰が何の目的で前生徒会長を毒殺したの?」とか、「なんで教師が一生徒の言いなりになっているの?」とか、「なんで女子校にわざわざ男子生徒を呼んだの?」とか、「なんで生徒会役員でもない主人公が新生徒会長に選ばれたの?」とか、観ていて次から次へと疑問が湧いてくるが、それらはけっきょく一つも解決されない。

「罪を憎んで人を憎まず」なんていうイージーな台詞と、石川佳奈のキュートな笑顔にごまかされ、事件は強制終了させられる。

はっきり言って、ドラマとしての完成度は低い。高い値段を抜きにしても、けっしてお薦めできる作品ではない。

だが、はたして制作者は、はなから生真面目な学園ミステリーを作ろうなどと考えていただろうか?

とてもそうは思えない。彼らが本当に描きたかったものは、思春期の少女特有の不安定な心理なのではないか。

住み慣れた世界が、ある日突然変貌してしまったら――そんな根拠のない恐怖が、この作品の基盤を成している。

そう解釈すれば、この作品がこれほどまでに不条理でキッチュなのも肯ける。整合性の欠如したストーリーは、あたかも少女の悪夢をそのまま映像化したかのようだ。

ストーリーで勝負できない以上、テンポの良さだけが命である。本作の場合、コスト・パフォーマンスは別にして合計1時間という短さに収まっているのが救いだ。観ていて飽きないていどのテンションを、ギリギリで保っている。

スラリとした長身で大人っぽい原史奈と、猫顔で愛嬌のある石川佳奈の先輩/後輩コンビも、相性バッチリ。舞台が女子校だけに、ラストは「百合エンド」で幕を閉じる。

ただ、それならなおのこと、ストーリー上の必然性もないのに男子生徒を登場させたのは、やっぱりいただけない。