★★★

河原に捨てられた死体や焼身自殺といったショッキングなシーン、全編に漂うダウナーな雰囲気など、岡崎京子の『リバーズ・エッジ』と多くの接点を持つことで知られるピンク映画。「ピンク映画七福神」の一人、今岡信治のデビュー作でもある。

が、『リバーズ・エッジ』のような瑞々しさや緊張感はまるでない。とにかく、登場人物が揃いも揃って貧乏臭いのである。ヒロインがワキガの映画なんて観たことありますか?

また主人公の青年も、「ぱぱんがぱん!」なんてヘンなポーズを取りながら、つねにヘラヘラしてるもんだから、件の焼身自殺シーンにも悲壮感はない。その後、全身包帯でウロウロする様なんてまるでコントみたいだ。

何の希望も楽しみもなく、ただ人生をムダに過ごしている若者たちが、ふとした思いつきで彗星の到来を待つ。彗星は古来から破滅の兆候として恐れられてきたものだが、彼らはそんなことを知る由もなく、「彗星が見れたらキレイだろうなぁ」ぐらいしか期待していない。

ラスト・シーンで彼らは空を見上げるが、ついに彗星はやってこなかった。

緩やかに堕落しながらも(なんてったって主人公は身障者になってしまったのだから)、ひとおもいに破滅することすら許されない感覚は、まさに生殺しだ。ウィリアム・ギブソンの詩まで引用した『リバーズ・エッジ』とは違い、悲劇としてすら成立していない。ついでに言うとSEXシーンも生々しいというより汚らしさばかりが際立っていた。