売れない役者をやっている主人公は、ある日、喫茶店で画家の男と知り合う。

なりゆきから、画家の住むアパートに一泊することになった主人公は、そのとき、画家の恋人と出会った。

客が来ていることを知らない彼女は、全裸で部屋に入ってきたのだが、主人公はその美しい体に心惹かれる。

ある夜、主人公は例の喫茶店で、画家の恋人と再会する。

画家は創作に没頭するあまり、いつも彼女をアパートから追い出してしまうのだという。

暇を持て余した二人は意気投合し、深夜の町をドライブする。

ちょうどそのころ、画家の作品がようやく完成した。

彼は恋人に捧げるために、全身全霊を込めて、一枚の絵を描き上げたのだ。

しかし、喫茶店まで迎えに行っても、彼女の姿はない。彼を置き去りにして、主人公と夜を共にしているのだから。

画家はやがて、恋人を主人公に寝取られたことを悟る。彼の情熱は無駄になってしまった。

さらに言えば劇中において、画家の描き上げた絵はチラっとしか映らない。よって、彼の恋人への愛は観客にも伝わることはない。

束の間の友情が、悲劇的な結末に終わる。作品全体が、徹底して感情を排した、クールな質感に統一されている。

――さて、画面からはなにやら観念的で小難しい印象を受けるけれど、そのじつ、泥臭い痴話喧嘩に終始しているのが情けない。

「静かな狂気」みたいなものを表現しようとしているのはわかるが、登場人物の描写がメリハリに乏しく、おまけにストーリーも陳腐ときては、ただ眠くなるだけである。主人公の職業をわざわざ俳優として設定しておきながら、それがストーリーの上でまったく活かされていないことにも疑問を感じる。

自分のアパートに戻ってきた主人公が、待ちかまえていた画家に背後から刺される件も、何の抵抗もしないままあっさりとやられてしまうものだから、なんだかマヌケな感じがした。

同じことは、ラスト・シーンにも言える。

瀕死の主人公を、彼の恋人(つまり主人公は二股をかけているのだ)と、画家を探して主人公の家を訪ねてきた恋人が、車で病院に連れていく。

しかし、その途中で車が故障し、足止めを喰ってしまう。

けっきょく病院まで間に合わず、主人公は事切れた。

彼の脈をとった恋人が、一言つぶやく。

「あ、死んだ」

これには呆れてしまった。オシャレさん気取りも、ほどほどにしないとたんなるギャグである。