★★
一口に「ホラー映画」と言っても、単純に「ホラー(恐怖)」だけを追求している作品は、意外に少ない。
たいてい、恐怖演出はあくまでも“味付け”であって、本当のテーマは別にある。
韓流ホラー『囁く廊下』(旧題『女校怪談』)の場合、テーマは《教育の暴力》だ。
厳格な女子校で巻き起こる、謎の連続殺人。その背景には、傲慢な大人たちによって青春を奪われてしまった少女たちの、哀しみと怨念が秘められていた──。
あらかた想像がつくとおり、犯人の正体は校舎に取り憑いた地縛霊なのだが、はっきり言って殺される教師のほうがよっぽど「ホラー」だ。
体罰と称し、女生徒たちを机の上に正座させ、わざと不自然なポーズを取らせた上でビンタする。
少女の潤いに満ちた柔肌が、野蛮な男の手で汚される。そのときの、ベチッという湿った音が耳に痛い。
作品全体の地味な質感も相俟って、ジメジメと肌にまとわりつくような陰気臭さが後を引く。
――それにしても、である。
この『囁く廊下』、いくらなんでも暗すぎやしないか。
いや、ホラー映画なんだから暗いのは当たり前だが。十代の少女たちの生態描写をメインに据えながら、「青春映画」特有の躍動感や瑞々しさがまるでない。
テーマが生真面目すぎるゆえに、あるていど冗漫に感じるのも仕方のないことかもしれない。が、それを差し引いても、やはり演出の拙さが散見する。
たとえば、先述の暴力教師が制裁を受ける件。
本来なら、大きなカタルシスをもたらしてくれるはずだ。ところが実際は、耳をナイフで削ぐだけ。じつに中途半端である。
いっそのこと、首ごと切り落としちまえ。そのくらいやらなきゃ、わざわざスプラッターな描写をする意味がないではないか。
主人公といつも行動を共にしてきたクラスメートが、じつは幽霊で、一連の騒動の犯人だったという「衝撃の事実」も、取って付けた感が否めない。せめて「主人公の前でしか姿を現さない」という設定にしておけば、不自然な印象は免れたはずだ。