『湘南爆走族』シリーズを手がけた神野太が監督するホラー映画シリーズ『頭狂23区外』全3作品を、1枚のDVDにまとめた特別版。

このシリーズ、もともとは1作品につき定価6,090円(税込)で発売されていたのだが、そんな殿様商売じゃいくらなんでも売れなかったのだろう。

もっとも、100円ショップの「ダイソー」では、廉価版が1作品315円(税込み)で売られているのだから、あまりお買い得という感じはしはない。

ちなみに、この『オムニバス・バージョン』は3,990円(税込)也。

とはいえ、ダイソーの廉価版は、いずれもエンド・ロールでブチブチと耳障りなノイズが入る。念のため、パッケージに記載されている「DVDコールセンター」に電話してみたが、そちらではDVDの使用方法に関する問い合わせしか受け付けておらず、商品の内容や品質に関するクレームにはいっさい応じられないのだという。

『頭狂23区外』シリーズに対する私の評価は、

第1作『眠レヌ』は駄作。

第2作『ユルセヌ』は佳作。

そして第3作にして最終作の『終ワラヌ』は、思春期の少女の不安定な心理に、拙いながらも肉薄した、忘れがたい作品であった。

せめて『終ワラヌ』だけでも、きちんとした映像で観たいと思ったが、6,090円(税込)はいくらなんでも高すぎる。

そこで、『オムニバス・バージョン』を買ってみた。

もともとは1作品1時間ていどだったが、『オムニバス・バージョン』は合計2時間にまとめてある。そのため、いくつか削除されたシーンがある。単品では収録されていたメイキング映像も入っていない。

それでも『眠レヌ』と『ユルセヌ』の編集は、さほど気にならなかった。

ところが、『終ワラヌ』は台無しだ。

なんと、ラスト・シーン、照り輝く太陽のショットが、ばっさり削除されている!

あのシーンが作品にとっていかに重要であるか。とにかく、あれがなければ、作品の「毒」は半減してしまうのだ。

『オムニバス・バージョン』を観た後、けっきょく私は単品で『終ワラヌ』を買い直した。

阿漕な商売にまんまと乗せられたようで癪だが、せめて私一人だけでも、この作品の存在を記憶に留めておきたかったからだ。