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監督の橋本以蔵は、なにも『ラッキー・スカイ・ダイアモンド』や『死霊の罠2』のような狂った映画ばっかり撮っているわけではなく、こういうまっとうな娯楽映画も作っていた。
実力はあるが社会性に欠け、業界を干されているCFディレクター。かつての相棒であったプロデューサーと共に再起を目論見む彼は、偶然見かけた美少女をスカウトし、傑作CFを作ろうとする。
だが彼女は、業界の黒幕とされる人物の孫娘だった。主人公たちは、黒幕の手下どもの妨害をくぐり抜けながら、なんとかCFの完成にこぎつけようと画策する。
軽快な会話、派手なアクション・シーンやカー・チェイス、さらには広大なロッキー山脈の情景まで交えながら、観客を飽きさせないようにテンポ良く進む。
映画初出演の高岡早紀も瑞々しく、むっちりした太股に頬ずりしたくなる。
しかし、たかがCF制作を妨害するだけのために、ヒットマンまでけしかけるのはやりすぎだ。たんに車をぶっ壊したかっただけなんじゃないかと邪推したくなる。
その上、そのヒットマンも、元々は主人公の仲間で、同じように業界から干されたCFディレクターなのだ。
どうせ仕向けるなら、そんな素人にやらせるんじゃなくてプロを雇えよ。
オチにも無理がある。
ヘリコプターの操縦士がアル中で使い物にならないからといって、免許もないプロデューサーが代わって操縦しようとする。
こんな、どう考えてもバカとしか思えないエピソードを、湿っぽく演出してどうするんだ。そこへ、業界の黒幕本人が、タイミング良くヘリを操縦してやってくるなんて、ご都合主義もいいところ。
物語は、ロッキー山脈の麓でワイワイガヤガヤとCFを撮ってる最中に幕切れしてしまう。だが、ここはやはり、完成した念願のCFを披露してほしかった。
なんだか、自分たちだけで勝手に盛り上がって、観客は置いてけぼり、といった印象の映画である。