吹石一恵と須藤温子のW主演に加え、『ねらわれた学園(97年度劇場版)』の清水厚と、『エコエコアザラクⅢ』の上野勝仁のW監督で制作された、SFアクション・ホラー。

テレビ朝日の『ウィークエンドドラマ』という番組で、6回に亘って放送されたドラマを、一本の作品として再構成している。結果、2時間越えという長丁場になったが、テンポ良く進んでいくので、観ていて飽きない。

しかし、作品全体の出来は粗い。

吹石演じる主人公をミュータントに改造した異星人の意図も、彼女を監視する謎の組織「キリガミ研究所」が、どうやって異星人と接触したのかという経緯も、まったく描かれていないので、リアリティに欠ける。

タイトルにもなっている「ゲイザー」なる組織にいたっては、終了間際に流れる主人公のモノローグで、唐突にその名前が出てくるというていたらく。このテの似非SFにありがちな《大風呂敷を広げたはいいが畳み損なった》作品の典型といえる。

何よりヒドいのは、ミュータントたちを演じる役者たちの演技力のなさ。

とくに、主人公を追いつめる【ミオ】なる女ミュータントは、《最強のミュータント》なる触れ込みにもかかわらず、佇まいがまるっきりそこらへんにいる素人だ。顔を不自然に歪め、奇声を発しながら迫ってくる様も、酔っ払いが管を巻いているようにしか見えない。ちっともカッコ良くない。「サ・ヨ・ナ・ラ」という決め台詞(?)がまるで決まっていないのにも失笑させられる。

この『ゲイザー』、おそらくアニメとして制作されたなら、もっと見栄えのする出来になったんじゃないだろうか。しかし、ビデオ撮りの安っぽい映像では、セットのショボさや役者の大根演技も手伝い、悪い意味で“お子さま向け”な印象を受けてしまう。

そうなると《私たちは事件の真相を追い求めて旅に出ました》というありがちなオチも、なんだかジャンプの打ち切りマンガみたいで、情けなさを増す。おまけに、真相を知るキリガミ研究所の所長が死んでしまった今となっては、何の手がかりも残っていないではないか。続編を匂わせるのは悪くないが、それならそれで、観る者の想像力や期待を膨らませるような終わり方にしてもらいたい。

けっきょくのところ『ゲイザー』は、主演を務めた二人のアイドルのプロモーション・ビデオとして見るのが、もっとも正しい使い道と言えるだろう。

清楚なヒロインを演じる吹石一恵は、表情の硬さが気になるものの、しっかりと感情表現できており、好印象。

一方の須藤温子は、「第7回全日本国民的美少女コンテストグランプリ受賞者」などという大仰な肩書きに反して、個性に乏しい貧相な顔立ちをしているように思うが、勝ち気な少女を可愛らしく演じている。