★★★★
「GL」とは「Girls Love」の略称。これは和製英語で、少女同士の恋愛関係を描く娯楽向けのフィクション作品を指し、「百合」とも呼ばれる。
主にコミックやライトノベルの分野で用いられる言葉だが、本作は実写映画である。元々はdocomoが運営する携帯サイト「男子禁制 女子限定」にて配信されていた4作品を、オムニバス形式で再編集し、DVD化した。同じシリーズで『BL』『TL』という作品も発表されている(ちなみにそれぞれ「Boys Love」「Teens Love」の略称)。
舞台となるのは、おそらく地方と思われる共学の高校。そのため男子も登場するが、背景の書割ていどでしかなく、メインはあくまでも女生徒間の恋愛模様だ。
かなりエロティックな表現を含んでいるため、R15指定となっている。アダルトビデオではないので実際の性行為は描かれていないけれど、主人公(もちろん女の子)が「学園一のツンデレ美少女」に対して自分の目の前でパンティを脱がせるといったSMチックな趣向にそそられる。
また夢の中という設定ではあるものの巨乳少女が四つん這いで全裸になるシーンも出てくる。
脚本を手がけたのはセリザワケイコという女性作家だが、リアリズムには比重を置いていない。
エロ描写にあたっては、やや現実離れした強引な展開も散見する。とはいえ、男性異性愛者向けのポルノ作品にありがちなたんなる「レズプレイ」に留まらず、少女に恋する少女の心理もきちんと掘り下げられているため、感情移入を妨げる要素にはなっていない。
加えて、出演しているグラビアアイドルおよびAV女優の大半が演技初体験であることから、プロの役者にはない生々しさが生まれ、初恋に伴う瑞々しさや緊張感を巧まずして表現している。
BGMに流れる穏やかなピアノの旋律も相俟って、上述したちょっぴり過激な演出を含みながら、どのエピソードも後味は良く、清々しくさえある。
世間の同性愛に対する誤解や偏見はいまだ根深いけれど、本作はそうしたシリアスな問題にはあえて踏み込まず、純粋に恋の楽しさと喜びを謳歌する。
おそらく当事者の目からすればそこに物足りなさを感じる向きもあるかもしれない。しかし本作の気負いのなさこそ、むしろ同性愛を“特殊視”せず、その存在を日常のものとして捉える態度に繋がっていくのではないだろうか。
間違っているのは作品ではなく、ましてや同性愛でもなく、そんな「世間」や「社会」のありようなのだから。