このインディーズ映画の主演を務めた石川佳奈は、ついぞ一般的な知名度を得ることはできなかったものの、独特な存在感のある女優で、個人的に一目置いていた。元々はグラビア・アイドルで、ブライダル・モデルとしても活動していたようだけれど、今となってはどこで何をしているのか。

石川はファンタジックなTVドラマ『LAST ALIVE』、スプラッター映画『スワンズソング』など、これまで出演してきた作品では、おっとりとした雰囲気の役柄を演じていた。

ところが本作の主人公【美月ナナ】は、男勝りで腰の据わった女性科学者。敵に捕らえられても、怯えることなく悪態をつき、なんとアクションまで披露する。

しかし、これが意外にもハマっているのだ。丸っこい体つきとは裏腹に、じつに力強くキレのいい動きを見せてくれる。アクション女優としての彼女をフィーチャーした活動が、その後展開されなかったことは残念だ。

とはいえ、作品全体の作りがあまりにもルーズで、せっかくの熱演も緊迫感が殺がれてしまった。

手塩にかけて開発したロボット【NA-1】が、上司の裏切りによって悪の組織「志野商事」に売り渡されてしまった件や、その【NA-1】が殺人兵器に改造されてしまったため、涙を飲んで破壊する件なども同様。

お寒いギャグとダラけたストーリー運びのせいで、ボルテージがすっかり下がってしまい、シリアスなシーンがちっとも胸に迫ってこないのだ。

挙句の果てに、破壊されたと思った【NA-1】がひょっこり生き残っていたというご都合主義にも、ただ呆れる。

コメディ風味に仕上げようとすること自体は間違っていない。だが、どうも制作者には、「ギャグ」と「悪ふざけ」の区別が付いていないようである。ナナを付け狙う殺し屋【便利屋A】や、志野商事(そういえばこのネーミングは「死の商人」と引っかけたんだそうな。勘弁してくれ)の面々にそれが顕著だ。ただ奇声を発してヘンな台詞を喋れば笑いが取れるという、三流のアングラ劇団みたいなノリには辟易とさせられる。

マトモに演技ができているのが、おそらく出演者の中で最年少であろう、石川佳奈一人だけというのも情けない。あとの役者は、揃いも揃って大根ばかりだ。

とくに酷いのは、ナナの相棒【高田ゲン】を演じた斉田宗継なる男優で、重要な役所にも関わらず、滑舌が悪すぎて台詞が聞き取れないこともしばしば。いくら主役が奮闘しても、それを支える脇役たちがこのていたらくでは、焼け石に水ではないか。

《究極の「ローバジェット」ながらこれだけの「ハイクオリティ」を実現》というのが、DVDのパッケージに書かれた本作の謳い文句である。だが実際のところは、むしろローバジェットを言い訳にしているようにしか思えない。

上で指摘した欠点の数々は、どれも一銭の金もかけずに改善できるものばかりだ。

ついでに言うと、このDVD、パナソニックという大企業が後援しているにも関わらず、オフィシャル・サイト(http://www.tech-search-limited.com/ ※閉鎖済み)から申し込む以外に入手方法がないのである。

私の場合、DVDはネット・ショップの通販でまとめ買い(たいてい値引きがある)するので、1枚だけわざわざ注文するのは面倒くさい。だいたい、いくら価格を1500円に設定しても、代金引換の手数料に800円も別途請求されるのでは、お得感が薄れてしまうではないか。