★★★

古賀新一の古典ホラー漫画を実写映画化したシリーズの2006年度版は、前編の『R-page』と後編の『B-page』の2部構成となった。 ストーリーが繋がっているため2作品まとめてレビューする。

今回、 主人公の女子高生黒魔術師【黒井ミサ】に扮したのはグラビア・アイドルの近野成美。

妙に渋い声を出すヴィジュアル系シンガーのIZAMがそのリーダーを演じる黒魔術団の一員として、【ミサ】は現代の日本に降臨した【破壊の悪魔エゼキエル】に立ち向かう。

【エゼキエル】の降臨に際し、ある田舎の野原で、晴れた日にも関わらず空から大きな雹が降り注ぐという異変が起こる。

それによって2名の人物が命を落とした。 エゼキエルの復活を阻止しようとした神父と、当日たまたまそこで写真の撮影を行なっていたモデルの美女【ミリス】。

『R-page』では神父に想いを寄せていた敬虔なシスター、 『B-page』では【ミリス】の専属カメラマンであり、雹に巻き込まれ一命を取り留めたものの全身に障害が残った【リョウ】という女性を中心として、物語が進行していく。

2作品共に、 ダークな色彩を強調した映像、 そして演劇じみた大仰な台詞回しにより、怪奇映画特有の非日常的なムードを作り出すことに成功している。

また、人体が瞬時にしてバラバラに崩壊したり、エゼキエルの化身である巨大な黒い花が人間を呑み込んでいく様など、SFXの完成度も高い。

とくに『R-page』では、 古びた教会を中心として過疎化した田舎町の風景が異境の空気を醸し出し、ミサを演じる近野成美のやや垢抜けないながらも清楚な佇まいと絶妙にマッチしている。

一方『B-page』の見所としては、【ミリス】と【リョウ】が同性愛の関係にあったことが仄めかされる。

自らは醜い姿と成り果てても、絶世の美女であった【ミリス】を黒魔術によって甦らせた【リョウ】の執念は、おぞましさよりもむしろ切なさとなって胸に残る。

加えて《人間の恐怖心に導かれて顕現する》という【エゼキエル】の設定が、この世の者ではなくなった恋人をやがて忘却してしまうことに怯えるあまり、非道な行為に手を染める【リョウ】の悲しい情念を引き立てる。

その意味で、【リョウ】が病院のベッドで昏睡状態から目覚めた時、幼女の姿で現れた【エゼキエル】が「――ミリスじゃないのに」という言葉を投げかけるシーンは、【ミリス】を失った【リョウ】の心情を代弁したものと解釈できよう。

【リョウ】が甦った【ミリス】と対話する時にだけ天災に遭う前の美しい姿に戻るという非現実的な演出もまた、ミリスの美貌に対する【リョウ】のコンプレックスを反映しているかのようだ。

ところが【ミリス】は、せっかく甦らせたにもかかわらず、【リョウ】に自分のことを忘却してほしいと訴える。

「過去」に縛られることをやめて、「現在」を生きることで、二人は一つになれるのだという。

その【ミリス】を、大人の色香の中に少女の無邪気さを併せもつグラビア・アイドルの秋山莉奈が演じることで、その純真な問い掛けはいっそう残酷な響きを帯びる。

だが【リョウ】はそれを拒否し、【ミサ】の張った結界からも立ち去ることで、【エゼキエル】に喰われてしまう。

人間の情愛が孕む業の恐ろしさ、そして悲しさを描いたドラマである。