★★

日常の何げない光景ややりとりを、もったいぶったテンポでダラダラと映す。悪い意味で典型的な「日本映画」という印象である。

高校を卒業したばかりの少女とその親友、さらにその恋人が織り成す淡い三角関係がプロットの軸となる。

他にも、音信不通の娘を探すバスの運転手、犬の飼い主を探すホームレス、コンビニ店員、離婚寸前の夫婦など、同じ町に暮らす人々の生活模様を同時進行させて、いわゆる『マグノリア』的な構造をもたせている。

それにあたり、脚本も兼ねる飯塚健監督は各々の背景をあえて描かず、観客の想像力に委ねるという手法を採用している。が、かえって裏目に出て、掘り下げの浅い散漫な印象となった。

DVDパッケージの解説文にもあるとおり、クライマックスとなるは桜吹雪が舞い散るシーンだが、それも映像とBGMの美しさに終始しているので胸に迫るものがない。せめて、各々のキャラクターと桜を結びつけるエピソードが描かれていたなら、余韻が深まったのではないか。

主人公とその親友を演じたのが、徳永えりと、安藤希。

二人とも高校の同級生という設定なのだけれど、82年生まれの安藤と88年生まれの徳永、その年の差は6歳! しかも徳永は公開当時(2006年)でちょうど18歳になる若手女優であった。

ところが、じつのところ二人が並んでもまったく違和感がない。というより、女性は18歳を過ぎれば、年の差がそれほど目立たなくなるのかも。

とくに安藤は、童顔と甘ったるい喋り方、加えてフランス人形のような端正な顔立ちで、年齢を超えたコケティッシュな魅力を感じさせる女優である。

一方の徳永は、上述のとおり、小林且弥演じる安藤の彼氏に横恋慕することで、親友であるはずの安藤と三角関係に陥る。それでもドロドロした印象がまったくないのは、安藤が転校してくる以前から、徳永が小林に想いを寄せていたという真相が用意されているためだろう。

そして、その徳永の想いに気付きながらも、小林と交際する安藤――『富江 最終章 ~禁断の果実~』の【富江】にしても、安藤希という女優には、こういう小悪魔っぽい役柄がぴったり合う。

なお、徳永が安藤と自画撮りするシーンで、徳永がカメラのシャッターを切る時の「ワン・ツー・スリー」という合図を、安藤が「アン・ドゥ・トロワ」に言い換えさせる件は、同じタイトルの安藤の写真集(※お尻丸出しのセミヌード入り)に引っ掛けた楽屋落ち。