★★

 

陰惨かつアヴァンギャルドな作風で知られるピンク映画監督、佐藤寿保の初期代表作。

主人公は、バイブレーターでしか興奮を得られない、孤独な非行少女。

彼女と、コンテナに女を連れ込んではバイブレーターで犯した挙げ句に毒殺する、インポテンツのサディストとの歪んだ愛情を軸に、ストーリーは展開していく。

しかし実際は、変態男との交流よりも、むしろ親友の少女とのやりとりが面白い。彼女が主人公の部屋を訪れた際のおどけた会話は、まさしく本作が公開された87年当時のアイドル映画のノリそのもので、妙にほのぼのとした気分にさせられる。

また、彼女をコンテナへと案内するために、ウォークマンを使って誘導するというアイディアもユニークだ。

こうして、親友を拉致監禁することに成功した主人公は、男が彼女をバイブで犯す様を見て興奮し、自分も彼女の陰部に荒々しくバイブを突き立てる。前半の楽しいやりとりとのギャップが、凄惨な印象をさらに強める。

さて、『ロリータ・バイブ責め』という劇場公開用タイトルのとおり、バイブレーターがこの作品のキーワードとなっている。主人公の少女と男が、やがてバイブレーターを捨て、生身の肉体を交えることにより、精神的成長を遂げるという筋書きだ。

しかし、そうしたメッセージに捕らわれるあまり、独りよがりな表現が目立つ。

主人公のスカートをめくったらパンツに銀色のバイブが挟まっていたり、薄暗いコンテナの中にいるのにもかかわらず、なぜか二人が突然サングラスをかけて会話していたり、路上で置き去りにされたバイブが、ブンブンと音を立てて蠢いていたり、しまいには、路上で知り合った友達にいきなりバイブを手渡して立ち去ったりする。

なにがなんだかわからないので、DVD特典のオーディオ・コメンタリーを聞いてみよう。これらの奇妙な演出の意図を、佐藤監督自身がもっともらしく解説している。

しかし、実際に映像化されると、どれもマヌケでしかない。アングラ特有の、無意味な理屈っぽさが鼻につく。

また、親友の少女が男に毒を飲まされて殺された後の展開は、作品にユーモアを持ち込んでいた要素がなくなってしまったことで、どうも頭でっかちな印象を受けてしまう。

たしかに、佐藤寿保の他には誰も作り得ない作品ではあるが、その個性を楽しむには、多少の我慢が要求される。

まぁ、主演の木村さやかと親友役の梁川りおのコケティッシュな可愛らしさに免じて、「ヘンテコなアイドル映画」として観るのが妥当であろうか。