MISFITSを例にとるまでもなく、パンク・ロックのバンドは時折、B級ホラー映画のタイトルから曲名を取ったり、またその1シーンをアルバムのジャケットやフライヤーのデザインにしたりする。B級ホラー特有の胡散臭さ、下劣な表現、チープな味わいは、たしかにパンク・ロックと通じるものがある。

私が、この『FROM HELL IT CAME』という、まっとうな映画ファンの間ではまず話題に上らないような作品を観たのも、「和製ミスフィッツ」ことBALZACが、1995年のハロウィーンにリリースした記念すべき1stアルバム『THE LAST MEN ON EARTH』の中で同じタイトルの曲を収録していたことがきっかけだった。彼らのレパートリーには、他にも『BLACK SUNDAY』、『NIGHIT TIDE』、『NIGHT OF THE BLOOD BEAST』といったナンバーがある。いずれも、マイナーなホラー映画のタイトルから取られたネーミングだ。

しかし、音楽は本を読んだり仕事をしたりしながら聞き流すことができるけれど、映画の場合、終わるまで画面の前に拘束されなければならない。それに、CDは好きな曲だけ取り出して聴けるが、映画は退屈なシーンを飛ばしてしまうと、ストーリーがわからなくなる。

その意味で、映画鑑賞は音楽よりも負担が大きい。たんなる「元ネタ」的な感覚で接すると、痛い目に遭う。

『FROM HELL IT CAME』は、70分程度の短い作品であるが、集中力が続かず、途中でビデオを止めて寝てしまった。『ウルトラQ』みたいなシリーズ物の1話として30分くらいにまとまりそうな話を、むりやり引き延ばしたという感じだ。

いちおう、木の怪物(なのに火をつけても燃えない……?)【タバンガ】の着ぐるみが、映画の見所となっている。だが、小学生の落書きを元にしたんじゃないか疑いたくなる、意味不明なデザインに失笑。おまけに、それを中学校の美術部レベルの技術で強引に立体化したのだから、それはもうスゴイことになっている。

しかし、それにも増してマヌケなのが、【タバンガ】に襲われる人間ども。走って逃げても、重そうな体を引きずってヨタヨタ歩いてくるだけの【タバンガ】にあっさり追いつかれ、至近距離から投げた槍すら外してしまう。

こういう映画を一人で観ていると、「孤立無援」という言葉が頭に浮かぶ。部屋に友達を集めて「くだらね~」とか言いながらガヤガヤ観ると楽しいんだろうな(でも映画館で騒ぐのはやめてね)。友達のいない私は、この虚しさを、読者諸氏に分けて差し上げたい。