★★

実在するシリアル・キラー(連続殺人犯)たちの生き様を映画化したシリーズ「シリアル・キラーズ」の中の一つ。

本作はジョン・ゲイシーにスポットを当てている。地元の名士として信頼を集める一方で、33人もの青少年をレイプしたあげくに殺し、その死体を自宅の軒下に隠していたという人物である。

ゲイシーと言えば、子供たちのパーティーにピエロの格好で登場していたときの写真が印象的だ。ずんぐりと太った体型を陽気な衣装とメイクで着飾った姿は、笑顔の下に底知れぬ邪悪さが広がっているようで、いつ見ても背筋が寒くなる。

しかし本作において、そんな彼のピエロぶりは、あくまでも脇のエピソードでしかない。おそらく、同じ事件を元にしたスティーヴン・キング原作の『IT』があまりにも有名なので、その焼き直しになることを避けたのだろう。

かわりに、町の不良少年たちに職を与える一方で、彼らの弱みにつけいり、密かに慰み者にしていたという側面を強調している。

正統派のサイコ・サスペンスに仕上げようとしているのはわかる。ゲイシー役のマーク・ホルトンは、ときに高慢で、ときに哀れな中年男を見事に演じきった。ウジ虫やゴキブリが這い回る軒下の気持ち悪さも、しっかりと実写化できている。

しかし、実話を元にしているというだけあって、大胆なストーリー展開やキャラクター描写をするわけにもいかず、全体的な印象は地味だ。とくに、ゲイシーの犯行が発覚する経緯が曖昧なので、カタルシスが得られない。制作者の生真面目さが裏目に出てしまったか?