楳図かずおの有名ホラー漫画を、平成『ガメラ』3部作で知られる金子修介監督が映画化。ちなみに『ガメラ3 邪神覚醒』で主演を務めた前田愛も脇役で登場している。

当初の予定では那須博之が監督することになっていたが、撮影前に逝去してしまったため、金子監督が代わってメガホンを取ることになったという。

このような因縁による本作の主人公を、那須監督の『デビルマン』にも【ミーコ】役で登場した渋谷飛鳥が担っているのは、けっして偶然ではないだろう。

渋谷演じる【イズミ】と、小林翼演じる【ソウ】の姉弟愛を軸に据えたストーリーが、ちょうど『デビルマン』の【ミーコ】と【ススム】の姿と重なる。二人がいっしょにお風呂に入るシーンなんて、シスコンのケがある男子にはたまらないのでは。

また「黒い絵本」という小道具や、山の上に立つ洋館の佇まいを通して「ファンタジー映画」の雰囲気を作り出すことには成功している。

しかし、【ソウ】の左手が《正しき者を甦らせる神の手》で、また右手が《悪しき者を滅ぼす悪魔の手》という設定は、物語のキーとなるにも関わらず、その出し方があまりにも唐突すぎ、ただのご都合主義に思えてしまう。

【ソウ】がいきなり「我が左手は……」うんぬんと口上を垂れる件も、漫画で読む分にはそれなりにカッコいいのかもしれないけれど、演技の幼さが災いして滑稽な印象しか受けない。

加えて田口トモロヲの“怪演”もわざとらしく、生首の作り物っぽさなど「ホラー映画」としてのクオリティはきわめて低いと言わざるをえない。

もっとも、そうしたいかにもなB級臭さがすべてマイナス要因なのかと言われれば、そうでもない。縛り付けた少女に、血に染まったケーキを斧に載せてムリヤリ食わせるシーンなんて(しかもその後、彼女は豪勢にゲロを吐き出す)、露悪的な演出がキッチュな味わいを醸し出している。

だが終盤、殺された【イズミ】の体を突き破って【ソウ】が登場する件は、いくらなんでも悪趣味の度が過ぎており、せっかくの美しい姉弟愛が台無しである。

描きようによっては神々しい画になりえたのかもしれないけれど、グロを「美学」にまで昇華させるセンスが、金子監督にはないようだ。

ちなみに、本作の冒頭では《映画監督 那須博之に捧げる》とテロップが出る。しかし、日本映画史の汚点とまで言われる、あの悪名高い『デビルマン』を監督した彼に捧げる作品がこの有様とは……なんとも皮肉な感じがしてならない。

(2016年3月12日 加筆修正)