100円ショップの「ダイソー」で、一時期(00年代後半?)、映画のDVDが販売されていた。ただし価格は315円(税込)である。

そんな中に『頭狂23区外』と題された、計3作からなるホラー物のシリーズがあった。

シリーズ2作目『ユルセヌ』のパッケージにある謳い文句によると、

《大人気グラビア女優による初のコラボレーション実現!》とのことだが、

二宮優、乾曜子、衛藤美菜……う~ん、一人も知らない。

《それぞれに襲いかかる純度100%な恐怖とサイコのシンパシー!!》という意味不明の煽り文句も、いかにも苦し紛れという感じだ。

「頭狂」と書いて「トウキョウ」と読ませるDQN丸出しの当て字は、過去に『湘南爆走族』シリーズを手がけた神野太監督のセンスが遺憾なく発揮されたものと思われる。

しかし、そんなインパクト満点のタイトルとは裏腹に、第1作目にあたる『眠レヌ』は、ゆる~いお涙頂戴モノの怪談話であった。

まぁ、「泣かせるホラー」だって世の中にはたくさんある。「そういうもの」として優れていれば、何の問題もない。

主人公の看護婦と入院患者の少女、二人の百合っぽいシチュエーションも悪くない。夜の屋上で線香花火をやるシーンなんて、けっこうホロリときたのも事実。

しかし、『眠レヌ』はホラー映画としてどうこう言う以前に、まず映画作品として水準以下の仕上がりだ。

その主な原因は、監督自身が書いた脚本の杜撰さにある。

「私、17歳のこの夏を一生忘れないよ!」なんてことを、台詞で語らせるのはダメだ。

何者かに断ち切られた電話線を手にして「切れてる!」と、いちいち口に出さなくていい。

だいたい、一連の怪事件の真犯人がけっきょく人間だったというなら、病院内の人間が自分たちだけを残して突然いなくなるという怪現象の説明がつかない。

他にも、夜道を一人で歩く主人公の姿を、思わせぶりに長廻しで追っていながら、けっきょく何も起こらないとか、稚拙な演出が目立つ。

1時間ていどの短い作品ながら、退屈との格闘を強いられる。

主人公の看護婦を演じる、乾曜子もヒドい。悲鳴を上げるシーンでも、明らかに怖がってないのがバレバレ。

キャラクター自体にも共感できない。自分を守ってくれる少女の幽霊を犯人扱いしてしまうとは。

一方、少女のほうはというと、

主人公のモノローグによれば「高校生にしては少々大人っぽい雰囲気」の「美少女」だとのことだが、

それを演じる若菜まい自身は、むしろ子供っぽいし、お世辞にも「美少女」とはいえない。

おまけに、主人公の窮地を救ってくれるのはいいのだが、真犯人をナイフでグサッ……というのは、幽霊(しかも女の子)のくせにロマンがなさすぎる。

* * *

ま、でも315円(税込)ならこんなもんか――と思っていたが。

調べてみてビックリ。なんとこのシリーズ、もともとは1作品につき定価6,090円(税込)で発売されていたのだ!

そんな殿様商売じゃいくらなんでも売れなかったと見え、

後(2005年)に全3作品を1枚のDVDにまとめて「オムニバス・バージョン」と題し、定価3,990円(税込)で再発している。

その商魂たくましさには、感心するやら呆れるやら……。