★★★
100円ショップの「ダイソー」が、315円(税込)で販売していたホラー映画シリーズの第2作目。
今回の主演は、二宮優。双子の姉妹【真以子】と【唯】を一人二役で演じている。
乾曜子主演の前作『眠レヌ』が学芸会レベルの出来だったので、正直、まったく期待していなかったが、
本作は鑑賞に堪えうる仕上がりとなっている。ストーリー上のつながりもないので、本作から観始めてもOKだ。
* * *
高校教師になったばかりの【真以子】には、かつて【唯】という双子の姉がいた。
幼い頃、【唯】と遊んでいた【真以子】は、はずみで【唯】の片目に鉛筆を突き刺し(!)失明させてしまう。
それでも、二人は仲良しだった。ただ、明るい性格で障碍をものともせず、そのうえ勉強もできる【唯】に対して、
【真以子】は憧れと劣等感がないまぜになった、アンビバレントな想いを抱きながら育つ。
しかし高校2年のある日。
【唯】は学校の屋上で突然、【真以子】に心中をもちかける。
【真以子】は【唯】を止めようとするも、誤って突き落としてしまう。
以来、【真以子】は罪悪感に苛まれながら生きてきた。【唯】が将来なりたがっていた教師になったのも、彼女に代わってその夢を叶えてあげたいと思ったからだ。
ところが、そんな【真以子】のもとに、死んだはずの【唯】からメールが届く。
それからというもの、【真以子】の前に、【唯】の亡霊が現れるようになった。
追い詰められていく【真以子】。【唯】は、私を許してくれないのか……?
「唯」とは、唯一つのもの、すなわち真。
「真以子」とは、真に似たもの、すなわちニセモノ。
元来、ニセモノであるはずの私が、真になりかわって、のうのうと生き延びてしまった――。
真相は、ラストで明かされる。
なんと、【唯】は実在の人物ではなく、【真以子】が作り出した仮想人格にすぎなかったのだ。
小さな頃からイジメに遭い、心に傷を負った【真以子】は、唯一の親友と別れたことをきっかけに「もう一人の自分」を夢想するようになった。
すなわち、本当は【唯】こそが「ニセモノ」だったのだ。
そして病んだ心が作り出した人格は、やはり歪んだものとなる。
じじつ、成人した【真以子】の前に現れる【唯】は、セーラー服を着て、眼帯をつけた「死亡当時(?)」のままの姿だった。
一方の【真以子】は、五体満足の上、自分の夢も叶え、何不自由なく暮らしているように見える。
それなのに、ハンディキャップを持ち、成長も止まったままの【唯】に対して、いつまでも劣等感を抱き続ける。
それはすなわち、「真」であることを放棄したいという、【真以子】の現実逃避願望の表れにほかならない。
精神の安定を保つために、「もう一人の自分」を作り出したせいで、さらなる狂気へと追い込まれていく――
『頭狂23区外 ユルセヌ』は、そんな人間心理の不条理を表現した作品だ。
けっきょくのところ、幸福も不幸も、人の心が作り出す幻覚にすぎないということか?