カナ(石川佳奈)、マユ(上原まゆみ)、アユ(村田あゆみ)の3名からなる、

新人アイドル・グループ「ソフィー」が、

熱狂的ファンを名乗る謎の人物に追いつめられていく――という筋書きのサスペンス。

【アユ】の手を噛んだ飼い犬や、【カナ】を振った同級生が、黒ずくめの人物に襲われ、重傷を負わされた。

やがてソフィーは、マスコミによって「呪われたアイドル」というレッテルを貼られてしまう。

そしてマスコミが「ソフィー」の周辺で跋扈する黒ずくめの男の存在を報道すると、

あろうことか「ソフィー」のファンたちは、こぞって黒ずくめの服装を「ソフィー信者の証」として着用し、ライヴに集まるのだ。

本作の人物造形は、全体を通して、そのような非現実的で無理のあるものだ。

事件の真犯人も然り。

その正体は「ソフィー」専属の女性スタッフであった。

彼女の姉は、かつて「ソフィー」と同じ事務所に所属し、アイドルとして活動していたが、

マネージャーの男性と“繋がって”しまったことがばれ、業界を干されたあげく、自殺してしまった。

だが、そのマネージャーの方はというと狡猾で、なんとか事務所の社長に取り入ってのうのうと生き延び、今は何喰わぬ顔で「ソフィー」を売り出している。

そこで彼女は「ソフィー」に悪評を立てることで、間接的にマネージャーを苦しめようとした。けっきょく「ソフィー」は、復讐の道具に使われたにすぎなかったのだ。

たった30分のドラマで、ここまで強引な展開をしてしまったのだから、破綻を来さないはずがない。

冒頭、【アユ】の飼い犬がバットで殴打されるシーンでは、黒ずくめの人物が、ウォークマンで「ソフィー」の歌を聴きながら犯行におよぶという描写がなされている。しかし、終盤でこの実行犯がソフィーのファンではないことが明らかになるのだから、この演出には何の意味もないことになってしまう。

やがて事件は、犯人の姉の霊(!)を「ソフィー」の“4人目のメンバー”として迎えるという、ピースフルなオチがついて解決する。

杜撰な仕上がりのドラマながら、なぜだか憎めないのは、全編を通して、こういうほのぼのとしたムードが漂っているからだろう。

そもそも、肝心の「ソフィー」からして、魔法使いみたいなマントをヒラヒラさせながら、危うい音程で健気にラブソングを歌う、センスが20年は遅れているのではないか、という代物。

「イマドキこんな奴らいねーよ」と突っ込みを入れたくなるが、それだけに懐かしい感じがして、思わずあの不安定なファルセットを口ずさんでしまう。

とは言え、終始緩みっぱなしというのも考えもの。何よりも不満なのは、肝心の「ソフィー」自体が積極的に真相を究明しようとしないことである。

けっきょく犯人は警察が見つけてしまい「ソフィー」はただ事件に振り回されただけなのだ。これでは、観ている側がドラマに感情移入できない。

そんなわけだから、ラストで【マユ】が犯人(とその姉の霊)に向かって訴える「芸能界は醜いことばかりだけど、私たちは最後までアイドルをやり遂げたい」というメッセージも、まったく胸に響いてこない。

アイドル映画に完成度を期待するのは野暮という向きもあろうが、ならばせめて、こういうキメるべきところではきっちり泣かせてもらいたいものだ。