★★

日本のホラー・パンク・バンド、BALZAC(バルザック)のDVD付きシングル『D.A.R.K』に収録された短編映画。

バンドのイメージ・キャラクターである【紙袋男】を主人公にした、無声映画調のゴシック・ホラーとなっている。

BALZACがヨーロッパ・ツアーを行なった際に訪れた、ドイツの古城が舞台。

スタッフには実在したシリアル・キラー(連続殺人犯)の名前が宛われているが、実際に監督を務めたのは、これまでBALZACのプロモーション・ビデオを数多く手がけてきた映像作家の山田貴教。脚本は、ボーカリストでメイン・ソングライターのHirosukeと山田による合作で、音楽はドラマーのTakayukiが担当した。

第一印象は、とにかく画面が汚い。もちろん、それはわざとやっていること。B級じみたチープな雰囲気を出すための工夫であろう。

しかし、せっかく本物の古城でロケを行ったのだから、その格調高い質感を活かさないのはもったいない。奇を衒うあまり、素材の持ち味を台無しにしている。

主人公の【紙袋男】は、茶色の紙袋を頭から被り、人骨がプリントされた黒革のつなぎ(通称「ホネホネツナギ」)を着る。だが、その妙に愛嬌のある出で立ちは、古城の荘厳な空気の中、完全に浮いている。コメディならともかく、ストーリーは生真面目なくらい陰鬱なので、違和感はなおさらだ。写真やイラストなら、そうしたギャップが面白さを出すかもしれないが、動きと時間を伴う映画の中では無理が生じてしまう。

もっとも悪いところばかりではない。ロック・バンドのイメージ・ムービーというだけのことはあり、BGMにはかなり凝っている。BALZACの曲ではなく、ハーシュ・ノイズ調のサウンドを用いているのだが、【紙袋男】が女を襲うシーンではけたたましく、悲惨な過去を回想するシーンでは音量を控えめにするなど、緩急をつけることで、巧みに恐怖を煽り立てる。

『Marchen aus dem horrorwald』を純粋な映画作品として評価することはできない。2分か3分という短い時間で完結するパンク・ロックと、短編とはいえ15分という時間を持たせなければならない映画とでは、勝手が違うということだ。