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ある若い女性の不審な死をきっかけに、テレビのドキュメンタリー番組のスタッフがカルト集団に潜入するという筋書きのモキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)。ちなみに脚本の小中千昭は、それ以前にも『邪願霊』というモキュメンタリー作品を手がけている。
カルトのリーダーは会員に対して、非合法な薬物を用いることなく、簡単な手術を施すことによって脳内麻薬「エンドルフィン」を活性化し、至高の快楽を与えるという。タイトルの『ドラッグレス』もこれに由来する。
劇中には、ジョエル・デイビスの著書『快楽物質 エンドルフィン』の訳者である安田宏や、SEXテクニックのハウツー本『快楽道』などで知られる指圧師のドクトル中嶋といった実在の人物も本人の役で出演。およそ10年後の『放送禁止』シリーズの先駆けと言える。
また『放送禁止』は、ストーリーが進むにつれて表向きのテーマの裏に隠された“真実”が明かされていくという構成を採っているが、『ドラッグレス』のストーリー展開も、番組のレポーターを務める主人公の男が件の不審死を遂げた女の恋人だったという別のドラマにシフトしていく。
主人公は、恋人を救えなかったことの罪悪感から、ドラッグ・カルチャーを憎悪している。
そしてあろうことか、取材に応じてくれたマリファナの栽培家にインタビューの途中で食ってかかり、あげく取っ組み合いの喧嘩をするというジャーナリストにあるまじき醜態を晒す。
役者はおしなべて大根ながら、このシーケンスの会話は妙に具体的で、おそらく脚本家の小中自身も過去にこうした横暴な取材を受けたことがあるのかもしれない。一般人の視聴者もこれを見た後では、マスコミの取材なんぞ一生願い下げと思うことだろう。
ところが主人公は、首尾よく問題のカルトに潜入した後、かつての恋人が受けた手術を自分も受けるという、これまたジャーナリストの倫理に反する行動を取る。
残った番組スタッフは、手術によって廃人と化した主人公を脳の研究施設に連れ出し、脳内のイメージを映し出す機械を用いることで、「至高の快楽」の映像化に成功した。
どうやら、そのトリップ映像が本作のハイライトになっているようだけれど、サイケ調の色彩感覚からして、モロに『2001年宇宙の旅』の「スターゲイト」の焼き直しである。
映像の随所で、件の死亡女性が亡霊のように登場し、最後は闇に浮かぶ主人公の顔が幽鬼のような形相で迫ってくるという「呪いのビデオ」的な趣向も凝らしている。
だが“元ネタ”の壮麗な映像美に較べたら、かえってVシネマゆえの貧乏臭さばかりが際立ち、テーマを突き詰められない消化不良のドラマも相俟って、バッド・トリップすること受け合いだ。