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救いもユーモアもなく、ひたすら無残(あらゆる意味で)な映像を垂れ流す作品。これに較べたら、いかに『オールナイトロング』シリーズがまっとうな「映画」であるかがよくわかる。なお夢野久作の小説『少女地獄』とは無関係。
主人公は、不幸な女子高生(というわりには年増ですが)。
母親は、いない。夫の暴力に耐えかね、二人の娘を残して蒸発してしまったからだ。
姉は交通事故に遭い、二目と見られぬ姿となったうえ、毎日、実の父親に犯されている。
主人公は、そんな姉を精一杯介護するが、かえって逆恨みされ、唾を吐きかけられる始末である。
そんな主人公にも、心の拠り所があった。
河原にテントを張って暮らす、ホームレスのおばさんだ。
汚い人形を自分の娘だと思いこみ、乳を与える彼女に、主人公はいつしか母の姿を重ねていた。パンを差し入れたり、人形を洗ってやったりと、いろいろ世話を焼く。
そこまでなら「ちょっといい話」といった趣だが、なんとこの主人公、突然に精神退行を起こして、女の乳を吸ってしまうのである。
そう、一見すると薄幸のヒロインである主人公自身も、そのじつ完全にイカレているのだ。
この映画に、マトモな人物は一人も出てこない。
主人公の親友である巨漢女子高生からして、援交相手の汚らしいオヤジと汗だくになってファックする。
ちなみに、本作にはけっこうSEXシーンが出てくるけれど、このデブ女の濡れ場が一番長く、思いっきり嫌な気分にさせられる。
さて主人公は、二人の男に狙われている。
一人は、相棒と共にレイプに明け暮れる工員。
けなげに生きる主人公に恋し、レイプから足を洗おうと決心する。
もう一人は、黒塗りの外車に乗った、金持ちの変態男。
出会いのきっかけをつかむために、主人公の自転車のサドルを盗むという、卑劣な野郎である。
そこをいくと工員の方は、まだ男らしい。主人公に手紙を渡して、愛を打ち明けようとする。
ところが主人公は来ない。いや、いちおう来てくれたのだが行き違いになってしまった。
逆上した工員は、相棒を引き連れて、主人公への復讐を開始する。
まず、河原へ行き、主人公が慕うホームレスの女を襲撃。大事そうに抱える人形を壊し、金属バットでボコボコに殴りつけた上に、相棒にレイプさせる。
続いて、主人公の自宅に殴り込む。
父親を金属バットで一撃。続いて、障害者の姉を風呂場に連れていき、冷水シャワーで水責めにしたあと、二人で抱きかかえ、前後の穴を同時に犯す。
ちょうどその頃、主人公は、金持ちに騙され、車の中に連れ込まれていた。
言い寄られるものの、断固として拒否し、いったん家に戻る。
しかし、彼女が目にしたのは、工員たちによって繰り広げられた地獄絵図の後だった。
ショックのあまり家を飛び出す主人公を、金持ちが介抱し、車に乗せる。
つけいる絶好のチャンスと思いきや、そこはやはり変態の性。手錠をかけて拘束した上、尿道にストローを差し込み、オシッコをチュウチュウと吸い出す。
だが、その後、主人公を解放して逃げ出してしまうのが腑に落ちない。もしかして、もう脈がないと判断し、ヤケクソになったのだろうか。そもそも、陵辱したければ初めて車に乗せた時点で可能だったはずだ。
心身共に疲れ果てた主人公は、癒しを求めて河原へと向かう。
その途中、待ち受けていた工員たちに捕まり、強姦されそうになる。抗う気力もなく身を任せる主人公。
ところが工員は、恋い焦がれた少女を犯す機会を得ながら、インポに陥ってしまう。レイプに慣れた彼は、女が泣き叫んでくれないと興奮しないのだ。
その様を見て囃し立てる相棒の喉を、腰に差したドライバーで一突し、工員は寂しげに立ち去っていく。
主人公は、ようやく女の元に辿り着く。
しかし、女は今まで大事にしていた人形を棄て、新しい人形を可愛がっていた。
まるで、自分を見捨てた実の母のように……。
ここへきて主人公の理性は、ついに破綻をきたした。
「お母さん!」と叫びながら、そばに転がっていた金属バットで女を叩きのめす。
なぜ首をもがれた人形が転がっているのかも、なぜ彼女が傷だらけになっているのかも、そして、なぜ自分の手に持つバットが血にまみれていたのかも、主人公は疑問に持つことなく、執拗に殴りつける。
それでも女は、主人公に優しく微笑みかけ、手をさしのべる。
だが、もう止められない。
最後の一撃を喰らった女の頭部は、あたかもボールのように跳ね飛んでいった──。
描写のエグさはともかく、片親や被虐待児童、ブルーカラー、ホームレスといった人々への偏見が「アングラ」「悪趣味」「猟奇」などの手垢に塗れた免罪符によって、何のためらいもなしにぶちまけられている。
赤い照明を用いたり、時折モノクロに切り替えたりと、工夫の跡はうかがえるものの、アングラの凄味というより貧乏臭さばかりが際立つ。とりわけ、図書館とかに置いてある「効果音集」から適当に流用したのだろう、情緒のかけらもないBGMの間抜けさはいかんともしがたい。
だが、それでも私は、ラスト・シーンにおける主人公と女の悲痛な姿を見て、不覚にも涙腺が緩んでしまった。
ヘドが出る。もうウンザリである。
(2022年9月1日 加筆修正)