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興味本位に手を出したLSDによって、現実と幻覚の狭間に陥ってしまった、ある若い映画監督の一夜を描く。
読んで字のとおり「映画」とは映像表現に特化したメディアである。よって通常、本作のような内容の作品は、「幻覚」の描写に注力することになる。
ところが監督のロジャー・コーマンは、何を考えたのか、「現実」の描写に重点を置いてしまった。ラリった主人公が夜の町をフラフラと彷徨うさまを、ただダラダラと撮っている。
せめてストーリー展開や登場人物の造形などに工夫があれば楽しめるが、そんなものはなきに等しい。
それではお楽しみの幻覚描写はどうかというと、これがことのほか面白くない。いわゆる「夢オチ」が禁じ手とされていることからもわかるとおり、あからさまにウソとわかる描写には感情移入できないのである。
それでも本作は公開当時、LSDによるトリップを疑似体験できるということで話題を呼んだという。
たしかに、CGを一切使わず、照明だけで幻想的な効果を演出する技術は大したものだ。
が、この映画を観るくらいなら、同じくヒッピーたちがトリップのオカズとして使ったとされる『2001年宇宙の旅』の「スター・ゲイト」を観たほうが断然良い。