人気お笑い芸人たちが、テレビの怪奇特番の収録中に、本物の霊と遭遇してしまうといった趣向の2時間ドラマ。2005年の夏にTBS系列で放送され、翌年にはエイベックスからDVD化されている。

くりぃむしちゅーを司会に、劇団ひとり、ヒロシ、さくら、ユンソナ、なぎら健壱といった実在の芸能人たちが、本人の役で出演する。

前半1時間は、本作がドラマであるということを隠し、オーソドックスな怪奇特番に見せかけながら進行する。『ノロイ』『輪廻』など当時の新作ホラー映画の宣伝を交えながら、ヒロシやアンガールズが心霊スポットをレポートする。

映画『サスペリア』に映り込んだ男の霊など、さんざん使い古されたネタでお茶を濁し、いかにもイージーな作りとなっている。また司会者自ら突っ込みを入れているとおり、舞台上の明るく派手なセットは怪奇モノに求められる暗さや不気味さとは無縁で、白々しいことこの上ない。この番組を「ドラマ」だと知らずに観始めたなら、さっさとチャンネルを変えてしまったことだろう。

ところが、レポーター役の友近が、都内にある「呪怨の館」を訪れて以降、番組の流れが急変する(……という趣向になっている)。

その一軒家には、かつて親子3人の家族が住んでいた。しかし、他の家に引っ越した直後、3人を載せた車が、運転を誤って、崖から海に転落。両親の遺体は見つかったものの、一人娘は未だに行方不明のままとなっている。それからというもの、この館では、全身ずぶ濡れの少女の幽霊が目撃されるようになったという。

くりぃむしちゅーの有田哲平は、昔、この近辺に住んでいて、件の家の前をよく通りかかったという。白い犬がいたというが、今回訪れると犬小屋は封鎖されていた。

しかし近所の住人の証言によると、家族は引っ越すにあたり、飼い犬を置き去りにしていったという。犬は、そのまま餌を与えられず、餓死したのだ。それなら、有田の見た犬は……?

友近とスタッフ数名が件の家に潜入する。まずは、怪現象が起こるという浴室へ。

家は無人のはずなのに、なぜか浴槽に水がたまっている。水には浴槽のサビが混じっていて、浴室中に異臭が立ちこめる。

浴槽の栓を抜き、水を流そうとする友近。だが、どうも流れが悪い。排水口を何かが塞いでいるようだ。

意を決して手を突っ込んでみると、どういうわけだか、海藻が詰まっていた。

友近一行は浴室を後にする。だがスタジオ内では、出演者の何人かが異変に気付いた。部屋を出る友近を映した鏡に、なんと、少女のような人影が映り込んでいるのだ!

司会者のくりぃむしちゅーは、友近に引き返すよう告げる。が、なぜか音声は届かない。くりぃむしちゅーたちの声をよそに、友近一行は、「開かずの押入」があるという2階の部屋に移動した。

友近が押入の扉を引くも、まったく動かない。スタッフの手を借りて、もういちど力一杯引いてみる。

すると、突然開いたと同時に、押入の中から、大量の水が覆い被さってきた。

カメラは故障してしまい、いったん中継が途切れる。ただならぬ事態に騒然とするスタジオ内。

だが、部屋に設置してあったCCDカメラに、まだ続きが映っていた。

そこには、逃げまどう友近たちと、少女の異様な顔面が映り込んでいた――。

先述のとおり『日本のこわい夜 特別篇』は「疑似バラエティ番組」という体裁を為している。

よって肝心の霊の映像までもが、この手の実録怪奇モノにありがちな、本物なのか、たんなる影なのか、微妙な映り方をしている。

しかしこの演出、どう見ても効果的とは言い難い。どうせ始めからフィクションとわかりきっているのだから、中途半端に「リアル」に見せようとせず、もっと大胆に登場させてもよかった。

ちなみに本作の監督を手がけた白石晃士は、劇中の特番で紹介された『ノロイ』に続いて『オカルト』『カルト』『コワすぎ!』シリーズなど、数多くのモキュメンタリー・ホラーを世に送り出し、またブームの先鞭をつけた『ほん呪』シリーズにも携わった経歴をもつこの道のスペシャリストであるが、お茶の間向けに手加減したのであろうか。

そもそも前半のバラエティ部分があまりにも長すぎ、「呪怨の館」に潜入するころには、すっかりテンションがすっかり下がりきってしまった。賑やかなセットと、騒然とするスタジオ内のギャップという“怖がらせどころ”も、これではまったく引き立たない。

ともあれ収録は中断し、番組は即座に「お蔵入り」が決定。主要なスタッフとくりぃむしちゅーは、件の家まで出向き、霊能者の御祓いを受ける。

──と、ここまでが疑似バラエティ番組。その後は、くりぃむしちゅーの二人を主演に、ドラマ仕立てで締めくくる。

しかし最後の最後に出てくる犬の霊と対峙するのは、件の家でその犬を見たという、有田のほうでなくてはならなかったはずだ。こういうポイントをきっちり押さえないせいで、けっきょくのところ奇を衒っただけのおふざけ企画に終始した。