とにかく、ムダの多い映画。要領のいい監督が撮れば90分以内にまとまりそうな話を、なんと2時間以上もかけてダラダラやっている。

思いついたアイディアに愛着があるのはわかるけれど、それらを吟味せずに全部ぶちこんだものだがら、ストーリーの流れが冗漫きわまりない。

たとえば、【徹子】が離婚した父親と会うエピソードなんて、明らかに蛇足だ。【雅志】とのデートの後でトコロテンを食べるシーンの伏線になっているのはわかるが、べつになくったっていっこうに構わない。いや、むしろないほうが、トコロテンなんていう渋い食べ物を女子高生が好むという意外性が強調されたはずである。

また、オーディションで【徹子】が披露するバレエを、審査員が「すご~い」と言わんばかりの表情で見つめているという演出にもセンスを疑う。まぁ、たしかに付け焼き刃とは思えない見事な踊りなのだけれど、なんだか自画自賛っぽい感じがして白けてしまうのだ。

同様のことは、劇伴の用い方についても言える。「こんなところで音楽なんて流さないほうが画面が引き締まるのに」という場面でも、監督自作のクラシック調BGMがガンガン鳴り響く。とくに映画館の大音響の中では、耳障りで仕方なかった。

これは、もともと本作が、ネットで公開された短編作品を編集したものだという事情も関係しているのかもしれない。短編は、切りつめられた時間の中で面白さを凝縮しなくてはならないが、同じ感覚で長編を作られてしまうと、観ている側はスタミナが続かない(PV畑出身の映像作家が映画を作ると、それらの大半が見るも無惨な失敗作になってしまうのも、これと同じ理由だ)。

そのくせ、肝心な部分については説明不足だ。【雅志】が、最終的に【花】の一方的な愛を受け入れる件も、心境の変化が描かれてないため、ご都合主義的な印象を受けてしまう。

鈴木杏演じる【花】と蒼井優演じる【徹子】、女の子同士のおどけたやりとりは、たしかに可愛いらしいし、笑える。だが、この物語の本筋は、異性である【雅志】を交えた三角関係にあるはずだ。

いまどき、きまじめにラブコメを作ったところで、なんの新鮮味もない。しかし、だからといって作品のキモをきちんと描かず、ディティールにばかりこだわっていたのでは「けっきょく真っ正面から勝負する自信がないんじゃないの?」と邪推されても仕方ないだろう。

とは言うものの、【花】が【雅志】に“真相”を告白するこのシーケンスはやはりハイライトだ。

舞台の袖で【雅史】に髪を結ってもらいながら、【花】が顔をクシャクシャにして泣きじゃくる。あの濃ゆい目鼻立ちも相まって、鈴木杏がもっとも得意とする「顔の演技」を、じっくりと堪能できる。

それにこのシーン、なんだかとてもいやらしい。女が男に、無防備な背後に立たせることを許すというシチュエーションは、期せずして、いやきっと狙いどおりにエロティックな隠喩となっている。